人工鼻と体温維持

 イソフルラン麻酔下で整形外科手術を受けた犬の熱損失における人工鼻の効果の報告によると、人工鼻は体温維持の補助にはならなかったとのことでした。
 全身麻酔を行う場合、気管内に気管チューブを挿管し、そこへガスの麻酔を流して麻酔を維持することが多いのですが、その時のガスは通常加湿や加温はされていません。そのようなとき、麻酔の呼吸回路に人工鼻をつけることで、鼻腔によって本来おこなわれる、吸った空気に湿度と温度を与え気管支や肺を守るという機能の代わりをし、保湿保温効果が得られるとされています。仕組みは比較的単純で、吐いた空気の熱と水蒸気がフィルターに蓄えられ、それを吸う空気に取り込ませるというものです。
 今回の報告では、人工鼻は体温維持にはあまり効果がなかったようですが、気道内が乾燥すると呼吸器感染を起こす確率が高くなりますし、バクテリアフィルター機能付き人工鼻というものもあるので、人工鼻を使うことが全く意味が無いというわけではないと思います。

参考文献
Journal of the American Veterinary Medical Association
December 15, 2011, Vol. 239, No. 12, Pages 1561-1565