犬のリンパ腫における経口投与イダルビシン

 犬のリンパ腫における経口投与イダルビシンの最大耐量と用量制限毒性を決定するための第I相試験についての報告によると、15kg以上の犬の最大耐量は22mg/㎡で、用量制限毒性として好中球減少症および血小板減少症がみられ、イダルビシンの高い血漿中濃度と相関しており、使用にあたり耐用性で抗腫瘍活性を有するとのことでした。

 リンパ腫は、リンパ節や肝臓、脾臓などの内臓に原発するリンパ増殖性の腫瘍で、一般的に中年齢から高齢の犬でみられ、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパード、ボクサー、プードル、バセット・ハウンド、セント・バーナードに好発するとされています。またリンパ腫は、抗癌剤を使用する化学療法によく反応する腫瘍とされていますが、どのような化学療法であっても完治することはほとんどなく、治療の過程で薬剤耐性がみられるようになってきます。ですから、単剤による化学療法よりも多剤併用の化学療法の方が薬剤耐性の発現を遅らせることができ、寛解期間も長くなるとされています。つまり化学療法の選択肢がいろいろあった方が寛解期間をさらに長くすることができるかもしれません。

 ちなみに第I相試験は主に安全性について検討する試験ですので、薬効や毒性についてはっきりするにはまだ時間がかかるでしょう。またイダルビシンは人では急性白血病の治療薬として使用されているようですが、経口薬は日本では入手できません。

 

参考文献

Journal of Veterinary Internal Medicine

Volume 26, Issue 3, pages 608–613, May-June 2012