犬においてトリクロサンを添加した縫合糸を使う影響

 犬における脛骨高平部骨切り術(tibial plateau leveling osteotomy [TPLO] )後の手術部位感染症と炎症に関して、切開閉鎖のためにトリクロサンを添加した縫合糸を使う影響についての報告によると、トリクロサンを添加した縫合糸は臨床使用において付加的な利点はなく、獣医療の整形外科手術において使用は勧められないとのことでした。

 手術などで使用される縫合糸は、犬や猫でも人体用のものを用いることが多いです。トリクロサンは薬用石鹸などにも使用されている殺菌剤で、最近では、このトリクロサンを添加したコーティング剤を糸の周囲に塗布した抗菌効果のある縫合糸があり、人では手術部位感染症のリスクが低減されるといわれています。しかし犬では、トリクロサンを添加した縫合糸と添加していない縫合糸を比較した場合、感染症や炎症の発生率に差はなく、試験管内条件下に比べて生体内条件下の場合、トリクロサンを添加した縫合糸の抗菌性が低下することがあるとのことでした。

 ちなみに、皮膚を閉じるときに通常の縫合糸を使用するよりも、ステープラーを使用したほうが炎症が軽減されたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

February 1, 2013, Vol. 242, No. 3, Pages 355-358