胸腺腫の犬における臨床的特徴、治療オプションおよびその結果

 胸腺腫の犬における臨床的特徴、治療オプションおよびその結果についての報告によると、全身腫瘍組織量が多かったり腫瘍随伴症候群の症状がみられる場合でも外科治療後の予後は良好で、外科治療、腫瘍のステージおよび2つめの腫瘍の存在が生存期間に影響を与えたとのことでした。

 具体的には、116頭の犬のうち38%の犬がラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーで、17%の犬で重症筋無力症の症状がみられ、34%の犬で高カルシウム血症がみられ、7%の犬で免疫介在性疾患がみられたそうです。また27%の犬で胸腺腫以外の腫瘍がみられ、14%の犬でその後胸腺腫以外の腫瘍の進行がみられたそうです。そして84頭の犬で腫瘍切除が行われ、14頭の犬で再発がみられたが2度目の手術後の予後は良好だったそうで、生存期間の中央値は手術した場合は635日、しなかった場合は76日だったそうです。さらに胸腺腫と診断された時点でみられる高カルシウム血症、重症筋無力症や巨大食道症、胸腺腫の病理組織学的サブタイプなどは生存期間と関連がなかったそうです。

 胸腺腫は胸腺上皮由来の腫瘍で、胸の前縦隔に発生し犬の腫瘍の中では発生は稀ですが、高齢の雌に比較的多くみられます。また浸潤性が高い傾向にあるので外科的切除が困難な場合が多いですが、腫瘍切除を行った方が生存期間が長いようです。


参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

November 15, 2013, Vol. 243, No. 10, Pages 1448-1454