片側の前十字靭帯断裂の犬においてそれに続く反対側の靭帯断裂の危険因子としてのファットパッドサインの評価

 片側の前十字靭帯断裂の犬においてそれに続く反対側の靭帯断裂の危険因子としてのファットパッドサインの評価についての報告によると、前十字靭帯断裂のすべての犬で両側の膝関節のレントゲン検査を行うべきで、靱帯断裂がみられない側でファットパッドサインがみられた場合は関節鏡検査も考慮するべきであるとのことでした。

 今回は96頭の片側の前十字靭帯断裂の犬と22頭の両側の前十字靭帯断裂の犬について後ろ向き研究を行ったそうです。96頭の片側の前十字靭帯断裂の犬の靱帯断裂していない膝関節の触診は84頭は正常で12頭は異常がみられ、その84頭のうち29頭は靱帯断裂していない膝関節にレントゲン検査でファットパッドサインがみられ、31頭で変形性関節症がみられたそうです。また触診で異常がみられたすべての犬でファットパッドサインと変形性関節症がみられたそうです。そして靱帯断裂していない膝関節のファットパッドサインはその後続いて起こる靱帯断裂の最も重要な危険因子で、靱帯断裂していない膝関節が触診上正常で、その後靱帯断裂が起こるまでの期間の中央値はファットパッドサインがみられる場合は421日、みられない場合は1688日、3年間で靱帯断裂する割合はファットパッドサインがみられる場合が85.3%、みられない場合が24.9%だったそうです。

 ファットパッドサインはレントゲンサインのひとつで、膝関節を横方向から撮影した場合膝蓋下は通常黒い三角形にみえますが、関節内に炎症が起こると関節包の拡張を伴う関節液の貯留と膝蓋下脂肪体の圧迫によりデンシティが上がり白くみえる場合をいいます。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

February 1, 2014, Vol. 244, No. 3, Pages 328-338