犬の口腔悪性黒色腫の切除後の全身補助療法の有効性

 犬の口腔悪性黒色腫の切除後の全身補助療法の有効性についての報告によると、犬の口腔悪性黒色腫の場合腫瘍の大きさと年齢は負の予後因子で、腫瘍の外科的完全切除は生存期間を延長させ、外科手術のみで長期生存が可能であるとのことでした。また全身補助療法は生存期間の延長はみられなかったが、それは第二種過誤(偽陰性)だったかもしれないとのことでした。

 犬の黒色腫は皮膚から発生した場合は良性の傾向が強く、口腔などの粘膜皮膚移行部では悪性の傾向が強いとされています。治療としては外科手術が主に行われますが、浸潤性の強い局所増殖と遠隔転移がみられることが多いため、通常は外科手術のみで根治するのは困難です。そのため、放射線治療、化学療法、免疫療法などの補助療法を行うことがあります。

 今回の報告では犬の自然発生した口腔悪性黒色腫のうち、外科手術のみを行った場合と外科手術と補助療法を行った場合の151例について後ろ向き研究を行ったそうですが、全体の生存期間の中央値は346日だったそうです。そして化学療法や免疫療法などの補助療法を行った症例は少数だったそうですが、98例の外科療法を行った後補助療法を行わなかったグループと補助療法を行ったグループの生存期間の中央値はそれぞれ335日と352日で、その差はなかったそうです。また予後因子としては腫瘍の大きさ、犬の年齢、腫瘍切除のマージン(腫瘍内切除、腫瘍辺縁切除または広範囲切除)の3つが関連しているとのことでした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

August 15, 2014, Vol. 245, No. 4, Pages 401-407