肝細胞癌を伴うかまたはみられないスコティッシュテリアの進行性空砲性肝障害の臨床的特徴

 肝細胞癌を伴うかまたはみられないスコティッシュテリアの進行性空砲性肝障害の臨床的特徴についての報告によると、スコティッシュテリアの空砲性肝障害は副腎ステロイド産生と関連し、肝細胞癌になりやすい傾向にあり、頻繁な血液検査や超音波検査が早期腫瘍検出のために勧められるとのことでした。

 スコティッシュテリアの空砲性肝障害はステロイド性肝障害に類似するといわれていました。ステロイド性肝障害はグルココルチコイドの投与や自然発生の副腎機能亢進症に続発して認められ、グルココルチコイドは肝臓のグリコーゲン蓄積と肝腫大を引き起こし、肝細胞内に蓄積されたグリコーゲン顆粒が組織学的に細胞質空砲としてみられるようになります。またステロイド性肝障害はほとんどの場合良性の可逆性肝病変を示し、臨床的な肝機能不全とは関連していないとされています。

 今回の報告では34%のスコティッシュテリアの進行性空砲性肝障害の症例で手術時、剖検時または腹部超音波検査時に肝細胞癌が検出されたそうです。組織学的には肝細胞癌の場合は異形成肝細胞巣が先行してみられたそうですが、肝細胞癌を伴う症例とない症例の間で臨床病理学的値や死亡時の年齢に有意差はなかったそうです。また56%の症例は高肝銅濃度がみられ、銅関連性肝障害と一致した組織学的特徴をもっていたそうです。副腎皮質機能亢進症と臨床徴候が一致したのは40%の症例だったそうですが、88%の症例で高プロゲステロン(グルココルチコイドの前駆物質)、80%の症例で高アンドロステンジオン(副腎で生産されるステロイドホルモン)がみられたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

October 1, 2014, Vol. 245, No. 7, Pages 797-808