犬の皮膚肥満細胞腫における初期評価時に転移の存在を予測するための2および3段階組織学的グレード法の比較

 犬の皮膚肥満細胞腫における初期評価時に転移の存在を予測するための2および3段階組織学的グレード分類法の比較についての報告によると、使用するグレード分類法にかかわらず組織学的グレードのみで予後判定を行うべきではなく、臨床ステージも考慮するべきであるとのことでした。

 肥満細胞腫の最も重要な予後因子は組織学的グレードであるとされています。最もよく使用されているグレード分類法は1984年にPatnaikらによって提唱された方法で、腫瘍細胞の形態、分裂頻度、腫瘍形成部位(真皮または皮下組織への浸潤度合)、間質の反応により3段階に分類します。しかしこの分類法は病理担当者によってグレードが異なることが示唆されています。一方組織学的分類の個人的な差異を減らすため、近年Kiupelらによって腫瘍細胞の細胞形態を重視した2段階分類が提唱されました。

 今回は386例の犬の皮膚肥満細胞腫について調査したそうですが、Patnaik分類でグレード1と分類されたすべての症例でKiupel分類でも低グレードと分類され、Patnaik分類でグレード3と分類されたすべての症例でKiupel分類でも高グレードと分類されたそうです。Patnaik分類でグレード2と分類された症例は、83.5%はKiupel分類で低グレードと分類され、16.5%が高グレードと分類されたそうです。Patnaik分類でグレード3の犬はグレード1または2の犬よりも初回検査時に転移がある可能性が有意に高く(オッズ比5.46)、Kiupel分類でも高グレードの犬の方が低グレードの犬よりも転移がある可能性が高かったそうです(オッズ比2.54)。しかしPatnaik分類でグレード1の5.8%、グレード2の16.5%、Kiupel分類で低グレードの14.9%の犬で転移がみられたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

April 1, 2015, Vol. 246, No. 7, Pages 765-769