イベルメクチン中毒に関連した網膜症のみられた5匹の猫

 イベルメクチン中毒に関連した網膜症のみられた5匹の猫についての報告によると、猫の経皮投与に起因するイベルメクチン中毒における眼科および網膜電図検査の所見の報告としては今回が初めてであり、視覚消失を含む臨床徴候は追加の治療なしに時間とともに解消したとのことでした。

 イベルメクチンはフィラリア症予防などの目的で使用されますが、比較的安全域が広く仔猫で110μg/kg、成猫で750μg/kgで使用しても悪影響はないとされています。しかし過剰摂取による中毒が起こることがあり、その場合摂取後10時間以内に症状がみられ、興奮、発声、食欲不振、散瞳、後肢の不全麻痺、方向感覚の喪失、視覚消失、頭を押し付けたり壁を登る行動、威嚇反射の欠如、不完全で遅い対光反射などがみられます。しかし神経的徴候は通常数日で減少し、ほとんどは2~4週間以内に完全に回復します。

 今回の報告では同一世帯の5匹の猫に突然の振戦、鈍麻、視覚消失および散瞳がみられ、その約12時間前に猫のオーナーが耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の治療として馬用の経口投与のイベルメクチンペーストを点耳(約22mg/cat;その半量をそれぞれの耳に投与)したそうです。猫のいずれも威嚇反応がなく、散瞳し対光反射の低下がみられたそうですが、眼底検査は著変がみられなかったそうです。そして4匹の猫で網膜電図検査を行い、b波の反応の減少が確認されたそうです。また2匹の猫の血清の中毒学的定量の結果としてイベルメクチンの存在が確認(450、610μg/L)されたそうです。その後5匹すべての猫の神経学的異常は消失し、網膜電図の反応も改善し、視覚は眼底検査で残存病理学的変化なしに回復し、完全に回復したそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

June 1, 2015, Vol. 246, No. 11, Pages 1238-1241