猫の救急時の治療における物理的灌流変数、血圧および予後と血中乳酸濃度の関連

 猫の救急時の治療における物理的灌流変数、血圧および予後と血中乳酸濃度の関連についての報告によると、血中乳酸濃度は身体検査と収縮期動脈血圧と共に組織酸素供給の異常を確認するのに有用な検査だが、今回の研究では予後との関連はみられなかったとのことでした。

 乳酸はグルコースの代謝過程で産生され、体内に蓄積された乳酸は肝臓でグルコースの再合成に利用されますが、組織低酸素や循環血流量の低下などが起こると高乳酸血症が生じます。ヒトでは乳酸は循環不全を伴うようなショック、心不全、または糖尿病、肝障害などの診断や予後判定を目的として測定されるようです。また馬では心肺機能や筋肉への運動負荷の評価のために利用されています。しかし犬や猫では血中乳酸濃度が臨床で利用されることはまだ少ないです。

 今回は111匹の猫で調査したそうですが、初期の血中乳酸濃度の中央値は2.7 mmol/L(レンジ、0.5~19.3 mmol/L)で、粘膜蒼白、末梢脈拍の異常および低体温のある猫、また収縮期動脈血圧が90 mmHg未満の猫の方が有意に高い乳酸濃度がみられたそうです。しかし入院時初期の乳酸濃度は生存して退院できた場合とできなかった場合との間で差は認められず、入院中の乳酸濃度の変化も予後とは関連がなかったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

July 1, 2015, Vol. 247, No. 1, Pages 79-84