猫における動脈管開存症の外科的および非外科的管理

 猫における動脈管開存症の外科的および非外科的管理についての報告によると、猫における動脈管開存症の発生はまれであることが示唆され、臨床徴候と診断所見は犬で報告されたものと一致し、今回の小さな集団では外科的治療と非外科的治療とでは平均寿命の有意な差はみられなかったとのことでした。また外科的結紮後は喉頭機能の評価が推奨され、さらなるより大きな集団での様々な治療の選択肢に対する予後の研究が推奨されるとのことでした。

 動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ小さな血管で、通常出生後すぐに閉鎖しますがそれが出生後も継続して開存しているものを動脈管開存症といいます。犬では先天性心奇形の中では頻度の高いものとされていますが、猫ではまれな疾患です。無症状の場合もありますが、心臓の左室の容量負荷が生じるとうっ血性左心不全による運動不耐性や肺水腫がみられます。また左心基部高位で連続性雑音が聴診されたり、触診で心臓内の逆流による振動であるスリルが触知されます。

 今回は28例の先天性動脈管開存症の猫で調査したそうですが、65%の猫で初診時は明白な臨床徴候はみられず26%の猫で複数の先天性心疾患がみられたそうです。そのうちの11例の猫は血管減衰術は行わず2例の猫でアンギオテンシン変換酵素阻害薬またはループ利尿薬が投与され、他の9例は無治療だったそうです。そして17例の猫で1つ以上の血管減衰術が行われ、15例中11例の猫で外科的血管結紮が成功し、2例の猫で血管内コイル塞栓術が成功したそうです。術中または術後の合併症は死亡(2例)、左側喉頭麻痺(2例)、声の変化(1例)、発熱(1例)、出血(4例)、乳び胸(1例)だったそうです。長期追跡が可能だったのは57%で、外科的減衰を受けなかった4例中3例の猫は心臓関連の疾患で死亡したそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

August 1, 2015, Vol. 247, No. 3, Pages 278-285