脾臓摘出により治療した犬の脾臓の血管肉腫における補助化学療法のあるなしによる生存期間

 脾臓摘出により治療した犬の脾臓の血管肉腫における補助化学療法のあるなしによる生存期間についての報告によると、犬の脾臓の血管肉腫は臨床ステージが大きく予後と関連しており、化学療法は治療の追跡期間の初期の生存期間の延長に有効だったとのことでした。また、従来のドキソルビシンベースのプロトコルとシクロホスファミドベースのメトロノミック療法のプロトコルの併用がそれぞれ単独で行うより効果的だったそうですが、現在のプロトコルでの生存期間の延長はわずかだったそうです。

 犬の脾臓の腫瘍では血管肉腫が最も発生が多く、悪性度の高いものです。臨床ステージは大きく3つに分類され、転移がなく腫瘍が脾臓に限局していて直径が5cm未満の場合はステージⅠ、脾破裂が起きているものはステージⅡ、遠隔転移を伴い大きく浸潤性のあるものはステージⅢとなります。ステージⅠはステージⅡ、Ⅲより予後が良いとされていますが、脾臓摘出のみで治療した場合の生存期間の中央値は19~86日とさまざまで、1年間生存するのは10%以下ともいわれています。

 今回は208例の血管肉腫の犬で調査したそうです。そのうち154例は手術のみ、54例は手術と化学療法を行い化学療法を行った症例のうち28例はドキソルビシンベースの治療、13例はシクロフォスファミドベースの治療、そして13例は両方の化学療法を併用して行ったそうです。外科手術のみで治療した犬の生存期間の中央値は1.6か月で、全体の追跡期間を考慮した場合手術のみと手術と化学療法を行った症例の間で生存期間に有意差はなく、臨床ステージのみが生存期間と関連する予後因子だったそうです。しかし臨床ステージの影響を調整し追跡期間の最初の4か月をみた場合、いずれのタイプの化学療法を行った症例(ハザード比、0.6)そして両方の化学療法を併用した症例(ハザード比、0.4)ともに生存期間の延長が有意にみられたとのことでした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

August 15, 2015, Vol. 247, No. 4, Pages 393-403