慢性小腸疾患が疑われた猫の罹患率と組織学的異常の潜在的原因

 慢性小腸疾患が疑われた猫の罹患率と組織学的異常の潜在的原因についての報告によると、慢性小腸疾患の臨床徴候があり超音波で腸の肥厚のある猫は高い割合で組織学的異常をもっており、腸の全層組織生検は腸リンパ腫と慢性腸炎を鑑別するのに有用でしたが超音波検査や臨床病理検査単独では鑑別できないとのことでした。

 腸疾患の一般的な臨床徴候は下痢です。下痢には大きく分けて小腸性と大腸性がありますが、小腸は本来栄養物質の消化・吸収を行うところなので、小腸性の下痢では便の頻度は変わらないものの便量が増え、嘔吐や体重減少がみられることがあります。また便に粘液や血液がみられるのはまれで、未吸収の脂肪を含む便になることもあります。一般的な血液検査では大きな異常がみられないことも多く、確定診断のため内視鏡検査や生検を行うこともあります。

 今回は慢性の小腸疾患が疑われる300匹の猫で調査したそうです。慢性の嘔吐、小腸性下痢または体重減少がありさらに超音波で小腸の肥厚がみられた症例について調査し、小腸の3か所以上から全層生検を開腹によって行い、その組織学的評価を行い必要に応じて免疫組織学的分析やPCR検査を行ったそうです。そして300匹の猫のうち288匹が慢性小腸疾患と診断され、最もよくみられたのは慢性腸炎(150例)と腸リンパ腫(124例)だったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

September 15, 2015, Vol. 247, No. 6, Pages 629-635