椎間板ヘルニア後の後肢の痛覚喪失を伴う犬における対麻痺からの回復に関連する因子

 椎間板ヘルニア後の後肢の痛覚喪失を伴う犬における対麻痺からの回復に関連する因子についての報告によると、椎間板ヘルニアを有する犬において外科的処置の即時性は結果と明白な関連はなく、回復の予後は引き起こした障害の詳細な性質によって強く影響される可能性があるとのことでした。

 椎間板ヘルニアの外科的処置を行う場合、疾患初期の実施が最も効果的で実施するまでの時間と機能回復の結果が相関することが多いとされてきました。長期にわたって脊髄に圧迫や炎症が続いていれば、脊髄は不可逆的変性変化を受けるとされています。また24時間以上にわたる深部痛覚の消失は正常機能の回復についての予後が不良であるとされています。

 今回の報告では後肢と尾の深部痛覚の完全な喪失のみられた犬に脊髄減圧手術を行い、それぞれの犬について対麻痺がみられる前の臨床徴候の期間、対麻痺がみられてから診断されるまでの期間、運動回復までの期間、死亡までの期間(3か月の追跡期間)、および手術前にステロイド薬を投与されたかを調べたそうです。また病変中心部における脊髄圧迫の重症度をCTまたはMRIで測定したそうです。その結果78頭中45頭(58%)の犬で脊髄減圧手術後3か月以内に自力歩行ができるまで回復したそうです。そして調査したどの要因も予後との関連はみられず、重要な点として対麻痺の発症と診断されるまでの期間の大きな遅延は予後不良と関連していなかったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

February 15, 2016, Vol. 248, No. 4, Pages 386-394