シカゴにある3つのシェルターでみられたH3N2犬インフルエンザウイルスに感染した犬の間欠的なウイルス排泄の16例

 シカゴにある3つのシェルターでみられたH3N2犬インフルエンザウイルスに感染した犬の間欠的なウイルス排泄の16例についての報告によると、H3N2に感染した犬は発症後21日以上隔離するべきで、臨床徴候の消失が21日より早くみられた場合でもウイルスの排泄は続いている可能性があるとのことでした。

 犬インフルエンザウイルスは2004年にフロリダで犬の呼吸器疾患の要因として同定されました。このウイルスは犬に感染する能力を獲得したH3N8馬インフルエンザウイルスの遺伝的変異と考えられており、犬から犬へ感染する能力があります。アジアでみられるH3N2ウイルスは犬から犬へ感染する能力を獲得した鳥類株に由来しています。臨床徴候がみられるのは感染後2~3日後、ウイルスの排泄のピークは3~4日後とされていますが、H3N2ウイルスは最大24日後までウイルスの排泄が確認されています。犬は急性感染から回復後数週間は咳を続けることがあります。犬インフルエンザウイルス感染自体は過去に著しい死亡率はみられていませんが、肺の正常な防御機能の低下により二次的な細菌性肺炎になることがあります。日本ではこれらのウイルスの犬への感染の報告はまだありません。

 H3N8ウイルス感染の場合は7日間の隔離期間が推奨されていましたが、今回の報告ではH3N2ウイルスに自然感染した犬からのウイルス排泄の期間がより長いことが示唆され、21日以上の隔離が感染の危険性を減らすために推奨されるとのことでした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

May 1, 2016, Vol. 248, No. 9, Pages 1022-1026