咳のみられる犬の喉頭の構造と機能

 咳のみられる犬の喉頭の構造と機能についての報告によると、咳単独の症状の犬で検査した138例中26例(19%)が喉頭機能障害をもっており、咳のある犬の診断として完全な喉頭鏡検査を含むべきであるとのことでした。

 典型的な咳反射は、最初にみられる深呼吸が特徴で、続いて閉塞した声門に対する急速かつ強力な呼気と、声門が開き、鼻咽頭の閉鎖、口からの強制的な呼気、それに伴う典型的な発声声帯の振動に起因する発声がみられます。喉頭、気管、または気管支に局在する咳受容器の刺激によって咳は誘発されますが、小気管支、細気管支および肺胞の刺激は咳を誘発しません。咳と同様の第2の重要な防御機構は、呼気反射で、これは声帯や気管の刺激によって引き起こされ、閉塞した声門に強制的に呼気がかかり、深い呼吸が先にみられません。真の咳は肺に空気を引き込み、その後の排泄の力を増大させ、粘液および異物の気管および気管支からのクリアランスを促進させます。逆に、喉頭からの呼気反射は有害物質の気道への侵入を防ぎます。したがって、咳反射は気管支疾患などの下部気道疾患が示唆され、呼気反射は一般的には上部気道刺激が示唆されます。

 今回の報告は、2001年7月から2014年10月までの間に咳の症状のある犬に1人の臨床医が喉頭鏡検査と気管支鏡検査を行い、喉頭の充血と腫脹がみられた場合ドキサプラム刺激の前後で喉頭機能を評価し、咳の持続期間(急性[2週間未満]、亜急性[2週間~2か月]、慢性[2か月以上])と疾患の診断をもとに比較したそうです。結果として咳が慢性または亜急性にみられた犬の134例中73例(54%)に喉頭充血がみられ、その有病率は疾患による違いはみられなかったそうです。13例の犬で喉頭片麻痺がみられ、13例の犬で喉頭麻痺がみられ、そのうち2例で発声障害、1例で喘鳴がみられたそうですがこれらの犬に一般的な症状ではなかったそうです。喉頭機能障害(麻痺または片麻痺)の有病率は疾患の間で有意差はなかったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

July 15, 2016, Vol. 249, No. 2, Pages 195-201