来院前に猫にトラゾドン塩酸塩の単回投与をすることによる移動と診察への不安の軽減効果

 来院前に猫にトラゾドン塩酸塩の単回投与をすることによる移動と診察への不安の軽減効果についての報告によると、来院前にトラゾドンを単回経口投与することでプラセボ群よりも移動および診察による不安の徴候が少なくなり、ほとんどのネコで許容できるもので有益であるとのことでした。

 トラゾドンは抗うつ薬で、犬では行動障害の補助的治療、とくに不安や恐怖に関連したものに対して使用されることがあります。作用は主に中枢神経におけるセロトニン活性を増強するセロトニン2Aの拮抗剤または再取り込み阻害剤として働き、またセロトニン受容体の5-HT2受容体に拮抗し、そのダウンレギュレーションを引き起こします。猫での使用例はあまりありません。

 今回は移動や診察に不安のある10匹の飼い猫(年齢2~12歳)に対して行い、最初に各猫にトラゾドン50mgまたはプラセボの経口投与を無作為に割り当てて行い、それぞれの猫をキャリアに入れ車で病院へ移動し診察を受けたそうです。オーナーは猫の診察の前、診察中および診察後の不安の徴候を記録し、獣医師は診察中の不安の徴候を記録したそうです。そして1~3週間後にトラゾドン投与群とプラセボ投与群を入れ替えて同様のプロトコールを行ったそうです。結果はトラゾドンを投与した方が移動中の不安の徴候が有意に改善され、診察中もハンドリングが容易になったそうです。また心拍数や他の生理学的値に有意差はみられなかったそうです。トラゾドン投与に関連した最も一般的な有害事象は眠気だったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

July 15, 2016, Vol. 249, No. 2, Pages 202-207