ファロー四徴症を有する犬および猫の疫学的、臨床的および心エコー検査の特徴および生存期間

 ファロー四徴症を有する犬および猫の疫学的、臨床的および心エコー検査の特徴および生存期間についての報告によると、若干の例外を除いてほとんどのファロー四徴症の犬と猫は若年成人期に心臓関連死がみられ、ほとんどの症例は診断時に重度の臨床徴候がみられたとのことでした。

 ファロー四徴症は先天的な心奇形の一種で、解剖学的特徴は漏斗部狭窄による右心室流出路閉塞、二次的な右心室肥大、大きな膜様部の心室中隔欠損、および右方変位した大動脈(騎乗大動脈)がみられます。一般的にキースホンドやイングリッシュブルドックでみられ、猫でもみられます。臨床徴候はチアノーゼがみられ、運動時や興奮時には右から左へのシャントが増強され末梢性のチアノーゼが一段とみられやすくなります。ファロー四徴症の自然経過や生存期間は十分に特徴づけられていません。肺の血流が維持され血液の過粘稠性がコントロールできれば数年は生存することもありますが、低酸素症、血液の過粘稠度および不整脈などの複合的な要因のため突然死がみられることも珍しくありません。

 今回の報告で最も一般的な犬種はテリアタイプで、ほとんどは診断時にチアノーゼを含むファロー四徴症の臨床徴候がみられたそうです。肺動脈狭窄は収縮期のドップラー法による圧力勾配(中央値108mmHg [26~255mmHgの範囲])が特徴的で、ほとんどの心室中隔欠損は大きく、心室中隔欠損の直径と大動脈の直径の比の中央値は0.6(0.18~1.15の範囲)だったそうです。心臓関連による死亡の年齢の中央値は23.4か月で、犬と猫で有意差はなかったそうです。ファロー四徴症と診断されてからの生存期間の中央値は心雑音がないまたは低グレードのもの(3.4か月)の方が心雑音が高グレードのもの(16.4か月)より短く、収縮期心雑音がないまたは低~軽度の心雑音がみられることが生存期間が短いことと有意に関連していたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

October 15, 2016, Vol. 249, No. 8, Pages 909-917