アメリカとカナダの猫の犬糸状虫感染症の血清陽性率と危険因子および予防薬の処方実態

 アメリカとカナダの猫の犬糸状虫感染症の血清陽性率と危険因子および予防薬の処方実態についての報告によると、推定される血清陽性率は0.4%で、アメリカでは何十万匹もの猫が犬糸状虫症に感染している可能性が高く、犬糸状虫はすべてのライフステージで診断が困難で、治癒的な治療の選択肢がないため、すべての猫で予防薬を確実に投与するべきであるとのことでした。

 猫は犬糸状虫に対し感受性はありますが、犬糸状虫にとって理想的な宿主ではないためほとんどは成虫になるまで生き残ることができません。成虫がみられる場合でも典型的には1~3匹と少数であることが多く、症状としては咳、定期的な嘔吐、食欲不振または体重減少などですが、突然死がみられるケースもあります。また成虫がいなくても幼虫の感染だけで喘息やアレルギー性気管支炎のような症状の犬糸状虫随伴呼吸器疾患がみられることがあり、診断が困難になることがあります。

 今回はアメリカやカナダの動物病院やアニマルシェルターにおける34,975匹の猫すべての血液サンプルからDirofilaria immitis抗原、FeLV抗原およびFIV抗体を検査しその地域や様々な猫のグループとの間で比較したそうです。その結果アメリカの35の州で犬糸状虫抗原に対し血清陽性がみられたそうですが、カナダではみられず、全体の血清陽性率は0.4%で、アメリカの南部で陽性率が高かったそうです。外にでる猫はそうでない猫の3倍、健康でない猫は健康な猫の2.5倍の陽性率がみられ、健康な猫の陽性率は0.3%、口腔疾患のある猫は0.7%、膿瘍や咬傷のある猫は0.9%、呼吸器疾患のある猫は1.0%だったそうで、レトロウイルスと共感染があると犬糸状虫感染のリスクが増加するそうです。また予防薬が処方されていた猫は12.6%で、血清陽性率の高い地域ではより一般的だったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

April 15, 2017, Vol. 250, No. 8, Pages 873-880