原発性リンパ節血管肉腫の犬の4例

 原発性リンパ節血管肉腫の犬の4例についての報告によると、犬の原発性リンパ節血管肉腫はまれで、著者らの知見によれば頸部リンパ節の遅発性の単独または複数の腫瘤として発症する疾患は過去にはないものであるとのこでした。また4例中3例は外科的切除と化学療法で長期生存がみられ、今回の報告での有効性は不明ではあるが、他の部位にできる血管肉腫は侵襲性の生物学的挙動がみられることを考えると、補助的な化学療法は考慮するべきであるとのことでした。

 血管肉腫は血管内皮細胞に由来する悪性腫瘍で、脾臓、皮膚、右心房で発生が多くみられます。また転移性の高い腫瘍ですが、血管は全身に存在するので原発性の血管肉腫はすべての臓器に発生する可能性があるといえます。一般的に腫瘍部分は破裂することがあり、急性出血、虚血または播種性血管内凝固(DIC)が起こることがあります。

 今回の報告では頸部の遅発性の腫瘤がみられた4頭の犬について評価したそうです。すべての犬で評価時点で臨床徴候はなく、CTまたはMRI検査にて内臓転移や他の原発性腫瘍はみられなかったそうです。それぞれの犬で腫瘍の切除手術が行われ、組織学検査で完全切除されたグレード1または2のリンパ節血管肉腫と診断され、すべての犬で化学療法が行われたそうです。生存期間は1例は259日で、他の3例はまだ生存しており手術後それぞれ615日、399日、365日だそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

November 1, 2016, Vol. 249, No. 9, Pages 1053-1060

犬におけるインプラント関連腫瘍

 犬におけるインプラント関連腫瘍についての報告によると、今回の研究結果で自然発生の腫瘍とインプラント関連の腫瘍の解剖学的相違が強調されたとのことでした。

 骨肉腫は原発性骨腫瘍の中で最もよくみられる悪性腫瘍で、統計的には四肢、特に後肢より前肢(橈骨遠位と上腕骨近位)に多く発生します。原因のひとつとして骨肉腫は骨折の治癒部位や金属インプラントのある部位に関連して発生することがあり、慢性刺激が腫瘍の発生原因であることが示唆されています。しかしそのリスクは低く、骨折の治療に金属インプラントの使用が推奨されないというわけではありません。

 今回の報告ではインプラント関連腫瘍の16頭の犬とインプラントを伴わない骨肉腫のある32頭の犬について研究したそうですが、インプラントの設置から腫瘍の診断までの期間の中央値は5.5年(9か月~10年の範囲)で、後躯に最もよくみられ、脛骨(8/16例)、大腿骨(5/16例)で1例は大腿骨と骨盤にみられたそうです。またインプラント関連腫瘍は骨肉腫であることが多く16例中13例にみられ、とくに骨幹部に最もよくみられ、自然発生の犬の場合よりも長骨の骨幹部に発生することが有意に高かったそうです。骨肉腫の症例のうち7例について組織型が明らかになっており非増殖性骨芽細胞型(3例)、軟骨芽細胞型(2例)、増殖性骨芽細胞型(1例)、線維芽細胞型(1例)だったそうです。骨肉腫でない3例は組織学的にそれぞれ組織球性肉腫、繊維肉腫、および紡錘形細胞肉腫と診断されたそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

October 1, 2015, Vol. 247, No. 7, Pages 778-785

慢性小腸疾患が疑われた猫の罹患率と組織学的異常の潜在的原因

 慢性小腸疾患が疑われた猫の罹患率と組織学的異常の潜在的原因についての報告によると、慢性小腸疾患の臨床徴候があり超音波で腸の肥厚のある猫は高い割合で組織学的異常をもっており、腸の全層組織生検は腸リンパ腫と慢性腸炎を鑑別するのに有用でしたが超音波検査や臨床病理検査単独では鑑別できないとのことでした。

 腸疾患の一般的な臨床徴候は下痢です。下痢には大きく分けて小腸性と大腸性がありますが、小腸は本来栄養物質の消化・吸収を行うところなので、小腸性の下痢では便の頻度は変わらないものの便量が増え、嘔吐や体重減少がみられることがあります。また便に粘液や血液がみられるのはまれで、未吸収の脂肪を含む便になることもあります。一般的な血液検査では大きな異常がみられないことも多く、確定診断のため内視鏡検査や生検を行うこともあります。

 今回は慢性の小腸疾患が疑われる300匹の猫で調査したそうです。慢性の嘔吐、小腸性下痢または体重減少がありさらに超音波で小腸の肥厚がみられた症例について調査し、小腸の3か所以上から全層生検を開腹によって行い、その組織学的評価を行い必要に応じて免疫組織学的分析やPCR検査を行ったそうです。そして300匹の猫のうち288匹が慢性小腸疾患と診断され、最もよくみられたのは慢性腸炎(150例)と腸リンパ腫(124例)だったそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

September 15, 2015, Vol. 247, No. 6, Pages 629-635

脾臓摘出により治療した犬の脾臓の血管肉腫における補助化学療法のあるなしによる生存期間

 脾臓摘出により治療した犬の脾臓の血管肉腫における補助化学療法のあるなしによる生存期間についての報告によると、犬の脾臓の血管肉腫は臨床ステージが大きく予後と関連しており、化学療法は治療の追跡期間の初期の生存期間の延長に有効だったとのことでした。また、従来のドキソルビシンベースのプロトコルとシクロホスファミドベースのメトロノミック療法のプロトコルの併用がそれぞれ単独で行うより効果的だったそうですが、現在のプロトコルでの生存期間の延長はわずかだったそうです。

 犬の脾臓の腫瘍では血管肉腫が最も発生が多く、悪性度の高いものです。臨床ステージは大きく3つに分類され、転移がなく腫瘍が脾臓に限局していて直径が5cm未満の場合はステージⅠ、脾破裂が起きているものはステージⅡ、遠隔転移を伴い大きく浸潤性のあるものはステージⅢとなります。ステージⅠはステージⅡ、Ⅲより予後が良いとされていますが、脾臓摘出のみで治療した場合の生存期間の中央値は19~86日とさまざまで、1年間生存するのは10%以下ともいわれています。

 今回は208例の血管肉腫の犬で調査したそうです。そのうち154例は手術のみ、54例は手術と化学療法を行い化学療法を行った症例のうち28例はドキソルビシンベースの治療、13例はシクロフォスファミドベースの治療、そして13例は両方の化学療法を併用して行ったそうです。外科手術のみで治療した犬の生存期間の中央値は1.6か月で、全体の追跡期間を考慮した場合手術のみと手術と化学療法を行った症例の間で生存期間に有意差はなく、臨床ステージのみが生存期間と関連する予後因子だったそうです。しかし臨床ステージの影響を調整し追跡期間の最初の4か月をみた場合、いずれのタイプの化学療法を行った症例(ハザード比、0.6)そして両方の化学療法を併用した症例(ハザード比、0.4)ともに生存期間の延長が有意にみられたとのことでした。

 

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August 15, 2015, Vol. 247, No. 4, Pages 393-403

猫における動脈管開存症の外科的および非外科的管理

 猫における動脈管開存症の外科的および非外科的管理についての報告によると、猫における動脈管開存症の発生はまれであることが示唆され、臨床徴候と診断所見は犬で報告されたものと一致し、今回の小さな集団では外科的治療と非外科的治療とでは平均寿命の有意な差はみられなかったとのことでした。また外科的結紮後は喉頭機能の評価が推奨され、さらなるより大きな集団での様々な治療の選択肢に対する予後の研究が推奨されるとのことでした。

 動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ小さな血管で、通常出生後すぐに閉鎖しますがそれが出生後も継続して開存しているものを動脈管開存症といいます。犬では先天性心奇形の中では頻度の高いものとされていますが、猫ではまれな疾患です。無症状の場合もありますが、心臓の左室の容量負荷が生じるとうっ血性左心不全による運動不耐性や肺水腫がみられます。また左心基部高位で連続性雑音が聴診されたり、触診で心臓内の逆流による振動であるスリルが触知されます。

 今回は28例の先天性動脈管開存症の猫で調査したそうですが、65%の猫で初診時は明白な臨床徴候はみられず26%の猫で複数の先天性心疾患がみられたそうです。そのうちの11例の猫は血管減衰術は行わず2例の猫でアンギオテンシン変換酵素阻害薬またはループ利尿薬が投与され、他の9例は無治療だったそうです。そして17例の猫で1つ以上の血管減衰術が行われ、15例中11例の猫で外科的血管結紮が成功し、2例の猫で血管内コイル塞栓術が成功したそうです。術中または術後の合併症は死亡(2例)、左側喉頭麻痺(2例)、声の変化(1例)、発熱(1例)、出血(4例)、乳び胸(1例)だったそうです。長期追跡が可能だったのは57%で、外科的減衰を受けなかった4例中3例の猫は心臓関連の疾患で死亡したそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

August 1, 2015, Vol. 247, No. 3, Pages 278-285

猫の救急時の治療における物理的灌流変数、血圧および予後と血中乳酸濃度の関連

 猫の救急時の治療における物理的灌流変数、血圧および予後と血中乳酸濃度の関連についての報告によると、血中乳酸濃度は身体検査と収縮期動脈血圧と共に組織酸素供給の異常を確認するのに有用な検査だが、今回の研究では予後との関連はみられなかったとのことでした。

 乳酸はグルコースの代謝過程で産生され、体内に蓄積された乳酸は肝臓でグルコースの再合成に利用されますが、組織低酸素や循環血流量の低下などが起こると高乳酸血症が生じます。ヒトでは乳酸は循環不全を伴うようなショック、心不全、または糖尿病、肝障害などの診断や予後判定を目的として測定されるようです。また馬では心肺機能や筋肉への運動負荷の評価のために利用されています。しかし犬や猫では血中乳酸濃度が臨床で利用されることはまだ少ないです。

 今回は111匹の猫で調査したそうですが、初期の血中乳酸濃度の中央値は2.7 mmol/L(レンジ、0.5~19.3 mmol/L)で、粘膜蒼白、末梢脈拍の異常および低体温のある猫、また収縮期動脈血圧が90 mmHg未満の猫の方が有意に高い乳酸濃度がみられたそうです。しかし入院時初期の乳酸濃度は生存して退院できた場合とできなかった場合との間で差は認められず、入院中の乳酸濃度の変化も予後とは関連がなかったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

July 1, 2015, Vol. 247, No. 1, Pages 79-84

犬における糖尿病の治療のためのインスリンデテミル

 犬における糖尿病の治療のためのインスリンデテミルについての報告によると、インスリンデテミルの12時間ごとの皮下注射は犬の糖尿病に対し実行可能な治療法で、インスリンデテミルの血糖コントロールを維持するために必要な投与量は他の種類のインスリンで報告されている量よりも少なく、とくに小型犬で使用する場合注意が必要であるとのことでした。

 犬でみられる糖尿病はほとんどの場合膵臓でつくられるインスリンの合成・分泌機能を失っているため、インスリンの注射による治療が必要です。使用するインスリン製剤は国内では犬用のものは販売されていないため、ヒト用のインスリン製剤を用いて治療を行います。インスリンデテミルはヒトの持続型インスリンで、犬においては他のインスリン製剤よりも血糖降下作用が強いとされています。

 今回の報告では10頭の自然発症の糖尿病の犬についてインスリンデテミルを12時間おきに皮下注射して6か月間治療し、臨床徴候、血中グルコース濃度曲線および血清フルクトサミン濃度により評価したそうです。インスリンデテミルの投与は6か月で血糖値と血清フルクトサミンの有意な減少をもたらし、最終的なインスリンの投与量の中央値は0.12 U/kg(0.05 U/kg~0.34 U/kgの範囲、12時間おき皮下注射)だったそうです。低血糖は血中グルコース濃度曲線の22%においてみられ、4頭の犬で臨床徴候としての低血糖が6回みられたそうです。臨床徴候の主観的改善は6か月の間すべての犬でみられ、臨床徴候および血中グルコース濃度曲線に基づき最終的なインスリンデテミルの有効性は5頭の犬で良い、3頭の犬で中程度、2頭の犬で乏しいとの評価でした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

July 1, 2015, Vol. 247, No. 1, Pages 73-78

イベルメクチン中毒に関連した網膜症のみられた5匹の猫

 イベルメクチン中毒に関連した網膜症のみられた5匹の猫についての報告によると、猫の経皮投与に起因するイベルメクチン中毒における眼科および網膜電図検査の所見の報告としては今回が初めてであり、視覚消失を含む臨床徴候は追加の治療なしに時間とともに解消したとのことでした。

 イベルメクチンはフィラリア症予防などの目的で使用されますが、比較的安全域が広く仔猫で110μg/kg、成猫で750μg/kgで使用しても悪影響はないとされています。しかし過剰摂取による中毒が起こることがあり、その場合摂取後10時間以内に症状がみられ、興奮、発声、食欲不振、散瞳、後肢の不全麻痺、方向感覚の喪失、視覚消失、頭を押し付けたり壁を登る行動、威嚇反射の欠如、不完全で遅い対光反射などがみられます。しかし神経的徴候は通常数日で減少し、ほとんどは2~4週間以内に完全に回復します。

 今回の報告では同一世帯の5匹の猫に突然の振戦、鈍麻、視覚消失および散瞳がみられ、その約12時間前に猫のオーナーが耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の治療として馬用の経口投与のイベルメクチンペーストを点耳(約22mg/cat;その半量をそれぞれの耳に投与)したそうです。猫のいずれも威嚇反応がなく、散瞳し対光反射の低下がみられたそうですが、眼底検査は著変がみられなかったそうです。そして4匹の猫で網膜電図検査を行い、b波の反応の減少が確認されたそうです。また2匹の猫の血清の中毒学的定量の結果としてイベルメクチンの存在が確認(450、610μg/L)されたそうです。その後5匹すべての猫の神経学的異常は消失し、網膜電図の反応も改善し、視覚は眼底検査で残存病理学的変化なしに回復し、完全に回復したそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

June 1, 2015, Vol. 246, No. 11, Pages 1238-1241

健康な犬の透視画像下での椎骨心臓計測(VHS)法の心臓と呼吸周期によるの影響

 健康な犬の透視画像下での椎骨心臓計測(Vertebral Heart Size, VHS)法の心臓と呼吸周期によるの影響についての報告によると、犬のVHSを評価する場合レントゲン撮影時のポジションや呼吸および心臓周期の影響に注意する必要があり、最適な肺野の評価と一貫した吸気終末時のレントゲン撮影が呼吸周期に起因するVHSの変動を制限するのに役立つとのことでした。

 VHSは心拡大の評価法の一つで、胸部レントゲンのラテラル像にて心臓の長軸と短軸それぞれの長さが第四胸椎頭側端を起点として椎骨いくつ分に相当するかを小数点第一位まで測定し、その二つの数値の合計がVHSとなります。参考範囲は8.5~10.5とされていますが、犬種により異なる場合があります。

 今回の報告では、14頭の健康なビークルを4人の観察者によりレントゲン透視下で左右横臥位で吸気終末と呼気終末における心臓収縮末期と拡張末期時のVHSをそれぞれ測定して比較したそうです。それによると平均のVHSはどの呼吸および心臓周期時でも左横臥位に対し右横臥位の方が大きくなったそうです。そして呼吸と心臓周期による差異は最大で吸気時は0.97、呼気時は1.11あったそうです。また心拍数は心臓の収縮期および拡張期におけるVHSの差と相関していなかったそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

May 15, 2015, Vol. 246, No. 10, Pages 1091-1097

犬における細菌性胆嚢炎と細菌性胆汁の特徴、治療および結果

 犬における細菌性胆嚢炎と細菌性胆汁の特徴、治療および結果についての報告によると、細菌性胆嚢炎および細菌性胆汁は胆道疾患の徴候がみられる犬において重要な鑑別疾患で、ダックスフンドが大きな比率を占めていたため品種的素因がある可能性があり、もし動かない胆泥がみられる場合は肝胆道系疾患をもつ犬の日常評価に胆汁の細胞学的検査を考慮するべきであるとのことでした。

 胆嚢炎は胆石症、総胆管や肝内胆管の閉塞あるいは炎症と関連しています。また細菌も関連があり、腸内由来の細菌が最も関与しているとされ、腸内細菌が逆行性に胆嚢に侵入するかあるいは肝循環から血液由来で胆嚢へ侵入することがあるとされています。

 今回の報告では10頭の細菌性胆嚢炎または細菌性胆汁のある犬と30頭の細菌性胆汁のない犬で調査したそうですが、細菌性胆嚢炎または細菌性胆汁のある犬に特徴的な徴候はなかったそうです。しかし細菌性胆嚢炎または細菌性胆汁のある犬の方が不動性の胆泥や多量の胆汁沈殿物がみられることが有意に高かったそうです。そして細菌性胆嚢炎または細菌性胆汁のみられた10頭の犬のうち5頭がダックスフンドだったそうです。また内科的または外科的治療の結果は良好だったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

May 1, 2015, Vol. 246, No. 9, Pages 982-989

犬の肛門嚢アポクリン腺癌の外科的切除時の補助的化学療法

 犬の肛門嚢アポクリン腺癌の外科的切除時に補助的化学療法を併用するかしないかについての報告によると、腰下リンパ節腫脹とリンパ節摘出は負の予後因子で、外科的切除の完全性は生存期間または無病期間と関連はなかったとのことでした。

 肛門嚢の腺癌は比較的高齢の犬でみられ、高カルシウム血症による多飲多尿がみられることがあり、悪性度が高く初期段階で腰下リンパ節や腸骨リンパ節へ転移することがあります。予後因子としては腫瘍の大きさが10㎠(最大直径2箇所の積)以上、肺転移がみられるおよび高カルシウム血症がみられる場合は生存期間が短いとされています。

 今回の報告では、生存期間は腰下リンパ節の腫脹がみられる場合(ハザード比2.31)およびリンパ節摘出を行った場合(ハザード比2.31)で関連がみられたそうです。無病期間は腰下リンパ節の腫脹がみられた場合(ハザード比2.47)、リンパ節摘出を行った場合(ハザード比2.47)、白金製剤の化学療法を行った場合(ハザード比2.69)短くなったとのことでした。また病理組織学的マージンが不十分でも生存期間や無病期間に差異はなかったそうです。

 

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Journal of the American Veterinary Medical Association

April 15, 2015, Vol. 246, No. 8, Pages 877-884

犬の皮膚肥満細胞腫における初期評価時に転移の存在を予測するための2および3段階組織学的グレード法の比較

 犬の皮膚肥満細胞腫における初期評価時に転移の存在を予測するための2および3段階組織学的グレード分類法の比較についての報告によると、使用するグレード分類法にかかわらず組織学的グレードのみで予後判定を行うべきではなく、臨床ステージも考慮するべきであるとのことでした。

 肥満細胞腫の最も重要な予後因子は組織学的グレードであるとされています。最もよく使用されているグレード分類法は1984年にPatnaikらによって提唱された方法で、腫瘍細胞の形態、分裂頻度、腫瘍形成部位(真皮または皮下組織への浸潤度合)、間質の反応により3段階に分類します。しかしこの分類法は病理担当者によってグレードが異なることが示唆されています。一方組織学的分類の個人的な差異を減らすため、近年Kiupelらによって腫瘍細胞の細胞形態を重視した2段階分類が提唱されました。

 今回は386例の犬の皮膚肥満細胞腫について調査したそうですが、Patnaik分類でグレード1と分類されたすべての症例でKiupel分類でも低グレードと分類され、Patnaik分類でグレード3と分類されたすべての症例でKiupel分類でも高グレードと分類されたそうです。Patnaik分類でグレード2と分類された症例は、83.5%はKiupel分類で低グレードと分類され、16.5%が高グレードと分類されたそうです。Patnaik分類でグレード3の犬はグレード1または2の犬よりも初回検査時に転移がある可能性が有意に高く(オッズ比5.46)、Kiupel分類でも高グレードの犬の方が低グレードの犬よりも転移がある可能性が高かったそうです(オッズ比2.54)。しかしPatnaik分類でグレード1の5.8%、グレード2の16.5%、Kiupel分類で低グレードの14.9%の犬で転移がみられたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

April 1, 2015, Vol. 246, No. 7, Pages 765-769

口内炎の猫における抜歯の効果

 口内炎の猫における抜歯の効果につての報告によると、口内炎領域の抜歯は三分の二以上の猫で大幅な口内炎の改善または完治がみられ、全歯抜歯は部分抜歯以上の効果はみられず、ほとんどの猫で臨床的な改善または完治を達成するには内科的管理が必要とのことでした。

 口内炎はよく認められる疾患ですが、原因はさまざまで物理的損傷、感染、免疫不全、口腔腫瘍などがあり、また原因不明のこともあります。治療はそれぞれの原因に基づいて行いますが、抜歯を行うと良好な反応がみられることがあります。

 今回は95匹の口内炎の猫について調査したそうですが、抜歯後の追跡期間の中央値は231日で、抜歯とその後の内科的治療で6.3%の猫で全く改善がみられず、26.3%の猫でほとんど改善がみられなかったそうです。しかし抜歯後39%の猫でかなりの改善がみられ、28.4%の猫で完治がみられたそうで、改善がみられた猫のうち68.8%は良好な状態を得るために有限期間の内科的治療が必要だったそうです。そして全歯抜歯と部分抜歯とでは治療の反応に関連はなかったそうです。また抜歯後最初の再検査で改善された長期的な反応として異常行動の解決(オッズ比7.2)、口内炎の減少(オッズ比3.5)、抗菌剤が不要になった(オッズ比3.7)とのことでした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

March 15, 2015, Vol. 246, No. 6, Pages 654-660

犬の先天性肝外門脈体循環シャントにおける尿路結石症の危険因子

 犬の先天性肝外門脈体循環シャントにおける尿路結石症の危険因子についての報告によると、初期評価でのシャント形態は尿路結石症の確率の増加と関連しておらず、オス犬、高齢犬および初期評価前に門脈体循環シャントの治療を受けていた場合尿路結石症のリスクが高くなるとのことでした。

 門脈体循環シャントは肝臓に流入する門脈と全身を循環する静脈血管とが吻合(シャント)する疾患で、門脈血が肝臓を経由することなく体循環に流れ込むため腸管由来毒素が肝臓で十分解毒されない状態となり肝性脳症の臨床徴候がみられます。また尿検査では尿酸アンモニウム結晶尿がみられることがあり、尿酸アンモニウム結晶自体はレントゲン検査ではわからない場合もありますが、マグネシウムやリン酸を含んでいる場合はレントゲン検査で結石として認められる場合があります。

 今回の報告では1999年から2013年の間にみられた95例について調査したそうですが、平均年齢は0.9歳で、28.4%が門脈奇静脈シャントで71.6%が門脈大静脈シャントだったそうです。尿検査は83.2%の犬で行われ、そのうち36.7%で主に尿酸アンモニウム結晶とストルバイト結晶がみられ、尿石は全体の35.8%の犬でみられたそうです。また門脈奇静脈シャントは尿路結石症の確率の増加との関連はみられなかったとのことでした。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

March 1, 2015, Vol. 246, No. 5, Pages 530-536

犬の生理的値における通院ストレスの影響の評価

 犬の生理的値における通院ストレスの影響の評価についての報告によると、初期検査でバイタルサインに異常がみられた場合移動や環境の変化によるストレスを考慮するべきで、疾患の確定診断やさらなる精密検査を行う前に問題となっている値を再チェックする必要があるとのことでした。

 ヒトでは病院などで血圧を測ると、家で測るときよりも高くなることがあります。いろいろな要因が考えられますが、医師や看護師の白衣を見て緊張して血圧が上昇してしまう場合が多いことから白衣高血圧と呼ばれています。犬や猫も病院に来ると緊張してしまうことがあり、同様の現象がみられるようです。

 今回の報告では家と病院で測定された血圧、直腸温および心拍数の間で有意差がみられ、平均で血圧は16%の上昇、直腸温は<1%の上昇、心拍数は11%の上昇がみられたそうです。またパンティング(あえぎ呼吸)がみられる犬は家では17%だったのに対し、病院では63%の犬でみられたそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

January 15, 2015, Vol. 246, No. 2, Pages 212-215

低血圧で危篤状態の犬において高乳酸血症があるかないかによる生存率の分析

 低血圧で危篤状態の犬において高乳酸血症があるかないかによる生存率の分析についての報告によると、低血圧で高乳酸血症がない犬の方が高乳酸血症のある犬よりも予後がよく、それは血中乳酸濃度は収縮期血圧に対して負の相関があるためで、血中乳酸濃度は低血圧の犬の予後に有用な測定基準となり得るとのことでした。

 ヒトでは乳酸上昇は予後予測に使用されており、敗血症、ICU患者において乳酸値が上昇するにつれて死亡率が上昇するとされています。乳酸値はショック時にその産生が亢進するだけでなく、肝臓、腎臓からの排泄が低下するためその様な悪い状態の結果上昇します。

 高乳酸血症のない低血圧の犬は高乳酸血症のある犬と比較して有意に高い収縮期血圧を有しており、高乳酸血症のある犬と比較して生存率が3.23倍高かったそうです。また犬の年齢、体重、疾患の重症度、および入院期間についでは有意差は認められなかったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

January 1, 2015, Vol. 246, No. 1, Pages 100-104

蛋白漏出性腸症の犬における血清生化学的マーカーの評価と生存期間

 蛋白漏出性腸症の犬における血清生化学的マーカーの評価と生存期間についての報告によると、C反応性蛋白、犬リパーゼ免疫活性およびα1蛋白分解酵素阻害因子は蛋白漏出性腸症と食事反応性腸症の間で大きく異なるが、生存期間の予測はできなかったとのことでした。

 蛋白漏出性腸症は腸管内への過剰な血漿蛋白の損失によって低蛋白血症を呈する腸疾患で、重度の場合は胸水、腹水、末梢浮腫などがみられます。食事反応性腸症は、低アレルギー食によって寛解がみられる慢性腸症で、下痢、嘔吐などの症状がみられ重度の低蛋白血症がみられることは少ないとされています。

 C反応性蛋白は蛋白漏出性腸症では18頭のうち13頭で、食事反応性腸症では18頭のうち2頭で高値がみられたそうです。犬リパーゼ免疫活性は蛋白漏出性腸症では3頭で高値でしたが、食事反応性腸症ではすべての犬で基準値内だったそうです。α1蛋白分解酵素阻害因子は蛋白漏出性腸症では9頭で、食事反応性腸症では1頭で基準値の下限以下だったそうです。そして蛋白漏出性腸症の生存期間の中央値は67日(範囲は2~2551日)だったそうです。

 

参考文献

Journal of the American Veterinary Medical Association

January 1, 2015, Vol. 246, No. 1, Pages 91-99